そう笑って話す人を見て、なんだかザワついた。
「嫌いになるかどうかは相手の問題。私は私のままでいい」
——そんなふうに、自信をもって言える人が、腑に落ちなくて、少ししんどくもあった。
その人が言った言葉自体には、間違いはないと思う。でも、まるで「嫌われることを気にするのは未熟」と暗に言われているような気がして、自分の感じている不安や怖さが否定されたようにも思えてしまった。
私は、まだ「嫌われたくない」という気持ちを持ったまま、人との関係を試行錯誤していた。
そんな自分をまるごと見せることができず、「それでもいい」と言い切れない自分に、少し落ち込んでしまったのかもしれない。
それに、ふと思ったのです。
「嫌いな人の話を、誰が聞きたいと思えるのだろう?」
人と関わる上で、相手に興味を持ってもらうこと、耳を傾けてもらうことはとても大事です。
嫌われてしまえば、その入り口すら閉ざされてしまうことがある。だからこそ、「嫌われてもいい」という言葉が、どこか現実から切り離されて聞こえてしまったのかもしれません。
もしかすると、私自身がまだ、そこまで“自分を肯定”できていなかったからかもしれない。
でもそれだけじゃなくて、どこかに置いてけぼりにされたような気持ちにもなった。
それはまるで、「自己肯定感」という言葉で、今の自分を否定されているような気がして——
その日から、私は考えるようになった。
「自己肯定感って、本当に高ければいいの?」
このブログは、そんな問いから始まった話です。
“自信”と“優しさ”のちょうどあいだで揺れながら、
私なりの「自己肯定感との向き合い方」を書いてみようと思います。
第1章:「自己肯定感が高ければいい」って、本当にそう?
「自己肯定感が大事」
この言葉、ここ数年で本当にたくさん耳にするようになりました。
本屋の棚にも、“自分を好きになろう”“自信を持てるようになろう”というタイトルが並びます。SNSでも、ポジティブで堂々とした発言にいいねが集まり、「そうなりたい」「こうあるべき」と思わせられる。
たしかに、自分に自信を持てることや、他人に流されずに生きる強さは、とても大切なものです。
でもその一方で、「自己肯定感が高いこと=正義」と思い込んでしまうと、見えなくなるものもあると私は感じています。
自己肯定感が高すぎると「共感力」が薄れることがある
「私は私、他人は他人」という言葉は、一見するととても成熟しているように見えます。
でも、その言葉の裏にあるのが「自分は自分だから、他人がどう感じるかは関係ない」という姿勢だったとしたら……?
それは、自己肯定ではなく「他者否定」になってしまっている可能性があります。
自己肯定感が高い人の中には、無意識に自分の価値観を「正しさ」として押し出してしまう人もいます。
「私は間違っていない」「私はこう思うからそれでいい」
——この言葉が強くなるほど、他人の声に耳を傾ける姿勢が薄れてしまう。
実際に私も、何か話をしても「でも私はこう思うから」で片付けられてしまい、対話が成り立たなくなった経験があります。
本当の意味で「強い人」は、自分にも他人にもやさしい
本当に自己肯定感が高い人は、自分の弱さも受け入れている人。
そして、他人の弱さにも、ちゃんと目を向けられる人です。
たとえば「私もよくわからないけど、一緒に考えたい」と言えること。
「あなたがそう思うのなら、そうかもしれないね」と受け止める余白を持てること。
こういう“やわらかい強さ”こそが、わたしにとっての理想の自己肯定感なのだと思います。
わたし自身も、押しつける側になっていたかもしれない
振り返れば、私自身も、誰かに「こうした方がいいよ」「もっと自信持ちなよ」と言ってしまったことがあります。
その時の私は、“正しいこと”を言っている感覚でいました。
でもそれは、相手のタイミングや心の余白を考えずに、自分の価値観を押しつけてしまっていたのかもしれません。
自己肯定感を“高める”ことが目的になってしまうと、人は、他人のペースや感情を置き去りにしてしまうことがある。
それに気づいたとき、私は「高ければいい」という考え方を、そっと手放しました。
「自己肯定感を整えたいけれど、ひとりではうまく向き合えない……」
そんなふうに感じるときは、
誰かに気持ちを話せるだけでも、心が少し軽くなることがあります。
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第2章:「私の正しさ」が、誰かを追い詰めることもある
「私はこう思うから」
「私は間違ってない」
「それはあなたの問題だよね?」
そんな言葉を、職場でもプライベートでも何度か聞いてきました。
本人は気づかない「圧」
以前の職場で、自己肯定感が非常に高く、常に前向きで自信たっぷりな上司がいました。
どんな状況でも「私は大丈夫」「私は正しい」と言い切れる人。
部下や同僚が何か不安を口にしても、返ってくるのは「気にしすぎだよ」「大丈夫大丈夫、私なんて○○だよ~」というような、“上書きの励まし”ばかりでした。
だんだんと、本音を話しづらくなっていったのを覚えています。
“この人には、自分の弱さは伝わらないかもしれない”
そんな気持ちが、私の中にじわじわと広がっていきました。
すれ違いは、想像力の欠如から生まれる
自己肯定感が高い人が、意図せず他人を追い詰めてしまう場面って、意外と多いんです。
- 自信がなさそうな人を見ると「もったいない」と言ってしまう(=相手の現状を認めない)
- 落ち込んでいる人に「切り替えていこうよ!」と励ましてしまう(=気持ちの段階を飛ばす)
- 他人の感情に立ち入る前に「それはあなたの問題」と割り切ってしまう(=関係を断絶する)
悪気があるわけではない。むしろ「良かれと思って」いるからこそ厄介。
“自分の正しさ”が中心になりすぎると、相手を想像する余白がなくなる。
そして、想像しないままに踏み込んだ言葉が、誰かの心を静かに傷つけてしまう。
「正しさ」と「優しさ」を両立させるということ
その人は、誰よりも自分を信じていた。
でも、他人の感情や価値観には、それほど関心がなかったのかもしれない。
けれど、「他人と一緒に生きる」ことを考えたときには、大事な何かが欠けているようにも思えた。
第3章:“ちょうどよい自己肯定感”って、どこにある?
自己肯定感が高すぎると、人にあてられて疲れる。
でも、低すぎると、自分を大事にできなくなる。
自己肯定感は、自分と他人の“境界線”をやさしく保つもの
たとえば——
- 「私はこう思うけど、あなたの考えも大事だよね」
- 「私はこういう人間だけど、それがすべてじゃない」
- 「できないときもあるし、無理な日はあって当然」
自分の感情を認めつつ、相手の感情も尊重できる。
その“ゆるさ”の中にこそ、やさしい自己肯定感はあるんじゃないかなと思うんです。
自己肯定感は「高める」より「整える」もの
「今日はちょっと自信ある」「今日はちょっと落ち込んでる」
——そうやって、自分の波をそのまま受け止められる力の方が大事なのかもしれません。
自己肯定感って、“強さ”じゃなくて、“柔らかさ”なのかも。
他人の言葉に惑わされず、自分の声を聴いてみる
誰かに「もっと自分を好きになって」と言われても、ピンとこないことってありますよね。
「そうか、自分は今、この言葉に疲れてるんだな」
——その感覚こそが、あなた自身の声だから。
自分にとって心地いいバランスで、「自分を認めていく」ことなんじゃないかと思います。
自己肯定感って、無理に高めるものじゃない。そう思えるようになったのは、
この本との出会いも大きかったかもしれません。
🔹『自己肯定感は捨てよう: もう傷つかない 自分らしく生きられる10の方法』(小泉健一)
「もっと前向きに」と頑張りすぎていた私に、
「今のままでも大丈夫だよ」と言ってくれたような一冊です。
最終章:「自分を認める」とは、“ちょうどいい自分”と生きること
「自己肯定感を高めよう」と思うと、私たちはつい「もっと前向きに」「もっと自信を持って」と、自分を“上げる”方向に動こうとします。
でも、それがうまくいかないときって、どうでしょう?
「またできなかった…」「結局、自分はダメなんだ」
——そんなふうに、自分を責めてしまうことってありませんか?
自分にとっての「ちょうどよさ」は、他人と比べなくていい
- 朝早く起きられた日は「私、今日ちゃんとしてるな」って思えたり
- 落ち込んでる自分を「まあ、それも私だよね」と受け入れられたり
そういう、“ちょっとした自分へのOK”を積み重ねることが、自分にとって心地よい「自己肯定感」を育てていくんだと思います。
自己肯定感は、“居心地”で感じるもの
大きな目標を達成したときだけじゃなくて、
1日の終わりに「なんだか、今日の自分、悪くなかったな」って思えたなら、
それも立派な“自己肯定”です。
「今の自分にちゃんと気づいてあげる」こと。
それが、「自分を認める」ということなのだと思っています。
最後に──あなたが「自分を大切にできる」場所であってほしい
完璧じゃなくてもいい。
落ち込む日があっても、モヤモヤする自分がいてもいい。
そのままのあなたに、「よくやってるよ」と言ってあげてください。
自己肯定感は、“自分を持ち上げる力”じゃなくて、
“自分に戻ってくる力”なのかもしれません。
ここまで読んでいただき、ありがとうございます。
もしこの記事が、あなたの中の小さな違和感や気づきに触れたのなら、
それはきっと、あなた自身が「自分とちゃんと向き合っている」証だと思います。
自分のペースで、静かな時間に、言葉と向き合ってもらえたら嬉しいです🌱

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スキマ時間で学べるものもあるので、気軽な一歩としておすすめです。
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